映画『父と僕の終わらない歌』感想|松坂桃李×寺尾聰が描く“記憶”と“音楽”の感動作

『父と僕の終わらない歌』:作品概要
公開日、監督、出演者情報
- 公開日:2025年5月23日
- 監督:小泉徳宏(『タイヨウのうた』『ちはやふる』シリーズ)
- 出演:寺尾聰、松坂桃李、松坂慶子 ほか
登場人物
- 寺尾聰:間宮哲太(まみや てった)役
音楽とユーモアを愛し、横須賀で楽器店を営む父。アルツハイマー型認知症と診断される。 - 松坂桃李:間宮雄太(まみや ゆうた)役
哲太の息子でイラストレーター。父の発病を機に実家に戻る。 - 松坂慶子:間宮律子(まみや りつこ)役
哲太の妻で、チャーミングで茶目っ気のある女性。献身的に夫を支える。 - 三宅裕司:藤岡治(ふじおか おさむ)役
哲太の幼馴染で、学生時代にはバンドを組んでいた仲間。スカジャン屋を営む。 - 石倉三郎:門松大介(かどまつ だいすけ)役
哲太の幼馴染で、学生時代のバンド仲間。ドブ板通り商店街で喫茶店を営む。 - 大島美幸(森三中):田所(たどころ)役
高齢者福祉施設の施設主任。 - 佐藤浩市(友情出演):医師役
哲太にアルツハイマー型認知症の診断を下す医師。 - 齋藤飛鳥:海野由梨(うみの ゆり)役
レコード会社の社員。SNSで哲太の動画に出会い、レコードデビューを持ちかける。 - ディーン・フジオカ:亮一(りょういち)役
雄太のパートナーでありミュージシャン。実家に戻る雄太を優しく送り出す。 - 副島淳:ダニエル役
聡美の夫。190cmを超える身長とアフロヘアーがトレードマーク。日本語が上手で漢検一級。 - 佐藤栞里:志賀聡美(しが さとみ)役
雄太の幼馴染。横須賀ドブ板通り商店街で夫のダニエルとバーを営む。
あらすじ
物語の主人公は、かつてレコードデビューを目指していたが夢を諦め、現在は家族と静かに暮らす哲太。そんな彼がアルツハイマー型認知症と診断され、日常が少しずつ変わっていきます。
一方、息子の雄太もまた、自分の人生と向き合いきれない日々を送っていました。そんな二人が、あるきっかけから音楽を通して心を通わせ始める——。
決して派手ではないけれど、じんわりと胸に沁みる物語です。
5つの作品の魅力
1.“記憶”と“音楽”がつなぐ、親子の絆
アルツハイマー型認知症というテーマを扱いながらも、決して重苦しくなく、むしろ音楽を通じて過去と現在、父と息子の心が交差する温かな物語が描かれています。忘れてしまうことの悲しさと、それでも残る“想い”の強さが胸に響きます。
2.寺尾聰×松坂桃李の“名演”
名優・寺尾聰の存在感、アルツハイマーを抱えた父としてのリアルな演技と、松坂桃李の繊細な感情を表現した演技にじわじわと心をつかまれます。特に、言葉にしきれない感情の機微を目線や沈黙で語る演技は圧巻。親子という関係性にリアリティと深みを与えています。
3.脇を固める交互なキャスト陣
松坂慶子、三宅裕司、石倉三郎、大島美幸、佐藤浩市(友情出演)、齋藤飛鳥、ディーン・フジオカ、佐藤栞里など、個性豊かな俳優陣が脇を固め、それぞれの立場から家族や地域のつながりを描いています。多様な世代が交差することで、より多面的な“人生の物語”が浮かび上がります。
4.寺尾聰の歌声が心を揺さぶる
元々シンガーとしても活躍してきた寺尾聰の“生の歌声”が、本作の大きな魅力のひとつ。父・哲太が歌うシーンには、役を超えて“本人の人生”がにじみ出るような深みと温かさがあり、胸が締めつけられます。まさに“歌が物語を語る”名シーンの数々。
5.「忘れても、消えないものがある」という優しいメッセージ
認知症という現実に向き合いながらも、この映画は“喪失”ではなく“希望”を描きます。忘れられても、そこにいた証や、大切な人との思い出は消えない。その想いが、観る人の心にそっと寄り添ってくれます。
感想
とにかく主演の寺尾さんと松坂さんの演技が本当に良かったです。寺尾さんの序盤の明るく陽気な父から後半怒りっぽく暴力的になってしまう様は認知症という病気のリアルが描かれて胸がギュッとなりました。そして、そんな父親に心を乱されながらも、様々な人に支えられなんとか向き合い希望を見出していこうとする松坂さん演じる雄太の姿に涙が溢れました。
家族の愛だけでなく、たくさんの愛に溢れた父哲太の人生だったからこそ、希望が生まれいったのだと思います。
”最後まで自分らしく生きるために愛に溢れた人生にしたい”そう思える作品でした。
個人的には母親役の松坂慶子さんの演技が素晴らしくて、母親役をやらせたらNO.1ですね。